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すべてが現金取引で、期末に現金以外の資産も負債もない状態であれば、利益=資金の増減となります。

すべての取引が現金取引で、期末に現金以外の資産も負債もない場合
すべての取引が現金取引で、期末に現金以外の資産も負債もない場合

では、売上だけ現金取引ではなく、掛け取引だった場合はどうなるでしょうか?

売上がすべて掛け取引だった場合
売上がすべて掛け取引だった場合

売上がすべて掛け取引だった場合では、利益と現金増減(キャッシュ・フロー)との間に生じた差額は、当期に売掛金が増加した金額と同じであることが分かります。その分だけ利益よりもキャッシュ・フローが少なくなっているのです。

現金増減 △2,000 = 利益 400 – 資産(売掛金)の増加 2,400

次に、仕入がすべて掛け取引だった場合を考えてみましょう。

仕入がすべて掛け取引だった場合
仕入がすべて掛け取引だった場合

このケースでは、利益と現金増減(キャッシュ・フロー)との間には、当期に増加した買掛金の分だけ差額が生じています。利益よりもキャッシュ・フローが多くなっています。

現金増減 2,400 = 利益 400 + 負債(買掛金)の増加 2,000

最後に、仕入れた商品がすべて売却されたのではなく、一部が売却され、一部が在庫として残っているケースを考えてみましょう。

一部が在庫として残っている場合
一部が在庫として残っている場合

このケースでも、利益と現金増減は一致しません。その理由は、当期に在庫が増加した分だけ、利益よりも現金増減が少なくなっているからです。

現金増減 △800 = 利益 200 – 資産(商品)の増加 1,000

間接法によるキャッシュ・フロー計算書の作成は、損益計算書の税金等調整前当期純利益からスタートしますが、上述のとおり営業活動に係る資産及び負債の増減があった場合には、利益とキャッシュ・フローが一致しません。キャッシュ・フロー計算書上、その差額を調整する必要があるのです。

資産・負債の増減額とキャッシュ・フロー

税金等調整前当期純利益

-(減算) 資産の増加 ⇒ 売掛金、商品が増加した分だけキャッシュが利益よりも少ない
+(加算) 資産の減少 ⇒ 売掛金、商品が減少した分だけキャッシュが利益よりも多い
+(加算) 負債の増加 ⇒ 買掛金が増加した分だけキャッシュが利益よりも多い
-(減算) 負債の減少 ⇒ 買掛金が減少した分だけキャッシュが利益よりも少ない

資産と負債が増加、減少した場合に、間接法によるキャッシュ・フロー計算書を作成する上で、どちらを加算するか減算するかについては、以下の貸借対照表等式を考えてみると、理解しやすくなります。

貸借対照表等式
貸借対照表等式 : 資産 = 負債 + 資本
現金+現金以外の資産 = 負債+資本
現金 = 負債 + 資本 - 現金以外の資産

この計算式を用いると、現金の増減は以下のように示すことができます。

現金の増減額と資産の増減額の関係
現金の増減 = 当期末現金 – 前期末現金
= ( 当期末負債 – 前期末負債 ) + ( 当期末資本 – 前期末資本 ) – ( 当期末資産 – 前期末資産 )

利益は資本の増減に該当します。よって、上記計算式の(当期末資本-前期末資本)の中には利益が含まれます。利益に負債の増加(減少)(当期末負債-前期末負債)を加算(減算)し、資産の増加(減少)(当期末資産-前期末資産)を減算(加算)することで現金の増減と一致させることができるのです。

現金の増減と現金以外の貸借対照表項目の増減の関係

現金の増減と現金以外の貸借対照表項目の増減の関係