連結決算の「なんとなく属人化」を防ぐための仕組みとは?

知らず知らずのうちに進む「なんとなく属人化」
企業の連結決算業務では、多くの企業が「属人化」の問題に直面しています。
「属人化」とは、特定の担当者が業務を独占し、その人しか作業内容や手順を把握していない状態を指します。
明確に意識されていなくても、気づかないうちに業務が特定の人に依存し、誰もその人の代わりができなくなっている状況が生まれがちです。
この「なんとなく属人化」が進むと、担当者が異動や退職をした際に、業務の停滞やミスの発生リスクが高まります。
特に連結決算のように専門性が高く、企業の財務状況に直結する業務では、属人化の弊害は大きな問題となります。
では、なぜ「なんとなく属人化」が進んでしまうのでしょうか? そして、企業が属人化を防ぐためには、どのような対策を講じるべきなのでしょうか?
連結決算業務が「なんとなく属人化」してしまう理由
属人化は意図的に行われるものではなく、多くの場合、以下のような要因によって無意識のうちに進んでしまいます。
過去の業務を踏襲し続けている
連結決算業務は「毎年同じ手順で処理する」ことが多いため、一度確立された業務フローが見直されることなく、そのまま継続されがちです。
結果として、「この処理は◯◯さんに聞けば分かる」という状態が続き、担当者がいなくなると業務が止まる事態に陥ります。
エクセルやマクロのブラックボックス化
連結決算業務では、エクセルやマクロを活用したデータ集計が多く使われています。
しかし、これらのファイルは特定の担当者が独自の方法で作成していることが多く、他の人が内容を把握しづらい状況になりがちです。
「計算式が複雑すぎて、作成者以外は理解できない」といったケースも珍しくありません。
マニュアルが未整備
属人化が進んでいる企業では、業務のマニュアルが整備されていないことが多く、手順が口頭伝承や暗黙の了解で処理されているケースがあります。
そのため、新しい担当者が業務を引き継ぐ際に、前任者がいないと対応できなくなるのです。
システムを導入しても使いこなせていない
連結決算システムを導入していても、設定が不十分だったり、担当者がエクセルに慣れているため、結局手作業で処理してしまう企業もあります。
その結果、システムを十分に活用せず、業務の属人化が解消されないままとなります。
連結決算の「なんとなく属人化」を防ぐための仕組み
では、こうした属人化を防ぐために、企業はどのような対策を取るべきなのでしょうか?
以下の3つのアプローチを実施することで、属人化を防ぎ、業務の安定性を向上させることができます。
業務プロセスの標準化と可視化
まず、属人化を防ぐためには、業務の標準化と可視化が不可欠です。
業務プロセスを整理し、誰でも同じ手順で対応できる仕組みを整えることが重要です。
<業務フローを文書化し、手順を明確にする>
- 連結決算の各ステップを詳細に記載した手順書を作成し、社内で共有する。
- 担当者ごとに作業内容を明確に分担し、「誰でも業務ができる状態」にする。
<タスク管理ツールを活用する>
- 業務の進捗状況を共有し、誰が何を担当しているのかを見える化することで、特定の人に依存しない体制を作る。
<エクセルのブラックボックス化を防ぐ>
- ファイルの管理ルールを統一し、マクロや関数の内容をチームで共有する。
- エクセル運用を減らし、クラウドツールやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入する。
マニュアルの整備と教育の徹底
業務マニュアルを整備し、定期的な研修を実施することで、属人化を防ぐことができます。
<詳細な手順書の作成>
- 各業務の手順を文書化し、新しい担当者がすぐに業務を理解できるようにする。
- 動画マニュアルを作成し、視覚的に理解できるようにする。
<社内研修の実施>
- 連結決算に関する研修を定期的に開催し、知識の属人化を防ぐ。
- 交代で業務を担当し、特定の人だけに知識が偏らないようにする。
アウトソーシングの活用
属人化のリスクを完全に排除するのが難しい場合は、一部の業務をアウトソーシングするのも有効な手段です。
<外部の専門家に連結決算の一部を委託>
- 連結決算のデータ集計やレポート作成を専門家に任せることで、属人化を防ぐ。
- 経験豊富なプロフェッショナルのアドバイスを受けながら、業務の最適化を進める。
<システム運用支援を外部に依頼>
- システムの最適な活用方法を専門家に相談し、業務フローを効率化する。
- システムの設定や運用を外部のコンサルタントに委託し、属人化リスクを低減する。
まとめ
連結決算業務の「なんとなく属人化」は、多くの企業で起こりがちな問題ですが、適切な対策を講じることで防ぐことが可能です。
業務の標準化、マニュアル整備、アウトソーシングの活用を組み合わせることで、属人化を解消し、安定した業務運営を実現できます。
特に、企業の成長や組織の変化に伴い、経理業務の属人化が深刻化することがあるため、早めの対応が重要です。
この機会に、自社の連結決算業務を見直し、長期的に安定した運用ができる体制を整えてみてはいかがでしょうか?

