連結決算システムを導入したのに手作業が減らない理由

多くの企業が連結決算業務を効率化するために専用のシステムを導入しています。
しかし、「システムを入れたのに、手作業が減らない」「結局、エクセルでの調整が必要になってしまう」という声も少なくありません。
本来、連結決算システムはデータの集約・計算を自動化し、業務負担を軽減するはずです。
それにもかかわらず手作業が減らないのはなぜでしょうか?
本記事では、その原因と解決策について詳しく解説します。
連結決算システムを導入しても手作業が減らない5つの理由
システム設定の最適化がされていない
多くの企業では、システム導入時に基本的な設定は行うものの、自社の業務フローに完全に適合した形での最適化が行われていません。
その結果、システムの標準機能では対応できない部分が発生し、手作業での補完が必要になります。
<よくある問題点>
- グループ各社からのデータフォーマットが統一されていないため、手作業で修正してからシステムに取り込む必要がある。
- システムの計算ロジックが自社のルールと合っておらず、手作業で修正しないと正しい数値が出ない。
- 設定変更ができる担当者が社内におらず、改善されないまま使い続けている。
<エクセルの使用が根強く残っている>
連結決算業務では、システムを導入してもエクセルが完全に排除されることは難しいです。
特に、以下のようなケースでは、システムとエクセルが併用される傾向があります。
<エクセルが残る主な理由>
- 連結決算システムが柔軟なデータ加工に対応しておらず、エクセルを使わざるを得ない。
- システムから出力したデータを、社内レポート用に手作業で調整する必要がある。
- 過去のエクセル運用に慣れているため、新しいシステムの機能を活用せず、結局エクセルで作業してしまう。
システムの操作に慣れていない場合、「エクセルのほうが早い」と判断し、旧来の方法に戻ってしまうことが多いのです。
データ連携の問題
連結決算システムは、複数のグループ会社のデータを統合する機能を持っていますが、実際の現場では「システム間のデータ連携がうまくいかない」という問題が発生しがちです。
<データ連携がうまくいかない理由>
- グループ会社ごとに異なる会計システムを使用しており、データフォーマットが統一されていない。
- システム間のデータ連携機能が十分に活用されておらず、手作業でデータを移行する必要がある。
- マスターデータの整備が不十分で、データ統合時にエラーが頻発する。
このような状況では、システムの自動処理を活かしきれず、手作業でのデータ加工やチェック作業が必要になります。
システムの操作に不慣れで使いこなせていない
システムを導入しても、担当者が操作に慣れていなければ、機能を十分に活用できません。
<具体的な課題>
- システム導入時のトレーニングが不十分で、担当者が基本的な操作しか理解していない。
- 便利な自動化機能があるにもかかわらず、活用方法が分からないため手作業で対応してしまう。
- システムのマニュアルが整備されておらず、新任の担当者が使いこなせない。
特に、連結決算は年に数回しか実施しない業務のため、前回の作業内容を忘れてしまい、操作ミスや非効率な運用につながるケースもあります。
システム導入時に業務プロセスの見直しをしていない
システム導入は単なる「ツールの変更」ではなく、「業務プロセスの変革」を伴うものです。
しかし、導入時に業務フローの見直しが不十分だった場合、旧来の非効率な方法がそのまま残り、手作業が減らない原因になります。
<ありがちな問題>
- システム導入前と同じ業務フローを続けており、システムの強みを活かしきれていない。
- 役割分担が明確でなく、手作業によるチェック業務が多く発生している。
- 「これまでのやり方のほうが安心」という心理的な要因で、新しい運用方法に切り替えられない。
連結決算システムを最大限に活用するための解決策
では、手作業を減らし、連結決算システムを最大限に活用するにはどうすればよいのでしょうか?
以下の3つのポイントを実践することで、より効率的な運用が可能になります。
システム設定の最適化
- 自社の業務フローに合わせたシステム設定を見直し、手作業の発生を抑える。
- システムベンダーや専門家のサポートを受けながら、最適な運用方法を確立する。
- システムのマスター情報(勘定科目や取引先情報など)を整備し、データ連携をスムーズにする。
操作トレーニングの強化
- システムの活用研修を定期的に実施し、担当者のスキルを向上させる。
- マニュアルやFAQを整備し、誰でもシステムを活用できる環境を作る。
- システムの便利な機能を積極的に試し、手作業を減らす工夫をする。
アウトソーシングの活用
- 連結決算の一部を外部の専門家に委託し、業務の効率化を図る。
- システム設定やデータ連携の最適化を、コンサルタントに依頼する。
- システムベンダーのサポートサービスを活用し、定期的にシステムの改善を進める。
まとめ
連結決算システムを導入しても、適切な運用がされていなければ手作業が減らず、業務効率化の効果を実感できません。
その原因として、「システム設定の最適化不足」「エクセル依存」「データ連携の不備」「操作スキル不足」「業務フローの見直し不足」が挙げられます。
これらの課題を解決することで、システムの活用度を高め、手作業の削減を実現できます。
今一度、自社の連結決算システムの運用状況を見直し、より効率的な業務フローを構築してみてはいかがでしょうか?

