連結決算を月次化するメリットとスモールスタートの手順

監修者:公認会計士 飯塚 幸子

「連結決算を年次だけでなく、月次でも正確かつスピーディーに把握できたら…」
経営判断やグループ管理の精度向上を求める多くの企業が、近年注目しているのが連結決算の月次化です。

しかし、「工数が膨大」「現場がついてこない」「システム投資が重い」といった課題も多く、なかなか一歩を踏み出せない担当者も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、
連結決算の月次化がもたらすメリットと、現場に負担をかけずスモールスタートで始めるための具体的な手順を、会計・税務のプロ目線でわかりやすく解説します。

連結決算の月次化とは

連結決算の月次化とは、これまで年次・四半期で行ってきたグループ全体の財務集計や開示を、毎月実施する業務体制に切り替えることを指します。

これにより、グループ企業ごとの業績や経営課題をタイムリーに把握し、迅速な経営判断や資金戦略が実現できます。

従来は、年次決算時のみ連結処理を行い、普段は個社管理だけ、という企業も多いですが、DX推進やグループガバナンス強化の観点から、月次連結への移行が中堅・大企業で急速に進んでいます。

なぜ今、連結決算の月次化が必要なのか

1. 経営スピードの加速

経営環境が目まぐるしく変化する現代、決算数値を“年1回”だけ把握するのでは対応が遅れます

月次連結決算を行うことで、グループ全体の状況をリアルタイムに近い形で把握し、素早い意思決定が可能となります。

2. ガバナンスとコンプライアンス対応

グループ企業が多い場合、不正や会計ミスの早期発見も重要です。

月次化によってモニタリング体制が強化され、ガバナンス・内部統制の実効性も向上します。

3. 株主・投資家・金融機関対応

上場企業や親会社からの情報開示要求が高まるなか、迅速な連結数値の提供は、外部評価や資金調達に直結します。

月次決算をルーチン化していることで、期末や四半期決算の早期化・精度向上にも繋がります

連結決算を月次化する4つのメリット

1. グループ経営の可視化

月次でグループ全体の財務数値が見える化され、
各社の業績やキャッシュフローの状況をリアルタイムに把握できます。

2. 経営課題の早期発見・改善

数字の“ズレ”や異常値も毎月チェックされるため、
不正やエラーの早期発見、課題の速やかな対応が可能です。

3. 決算早期化・四半期決算への備え

月次連結を平時から実践していれば、
四半期決算・年次決算時も大きな混乱がなく、スムーズに締め処理が進みます。

4. ステークホルダーの信頼向上

開示スピードが上がり、経営の透明性や外部からの信用力が高まります。

月次連結決算のスモールスタート手順

「いきなり全社で月次連結は難しい」と感じる方も多いはずです。ここでは現場負担を最小限に抑え、スモールスタートで始める手順を解説します。

Step1:目的・ゴールの明確化

まず「なぜ月次連結をやるのか」を経営層と現場で共有しましょう。
例:グループ経営の可視化、決算早期化、AI分析基盤づくり等。

Step2:パイロット会社・エリアの選定

グループ全体を一度に始めるのではなく、影響度や難易度の低い子会社・エリアから試験導入します。最初は親会社+数社で十分です。

Step3:プロセス・業務フローの整備

仕訳・残高データの受領方法や連結修正処理、報告スケジュールを整理します。既存の業務フローに“月次対応”をどう組み込むか、現場目線で業務分担・役割を明確化します。

Step4:システム・ツールの準備

Excelベースでもスタートは可能ですが、中長期的には連結会計システム(DIVA、STRAVIS、BIZForecastなど)やクラウドツールの活用も検討しましょう。
システム連携や自動化が進むほど、月次運用の負荷は軽減します。

Step5:運用・課題のフィードバック

1〜2回運用してみて、現場から上がる課題や“詰まりポイント”を吸い上げ、プロセスを微調整します。
無理のない範囲でカイゼンを繰り返すことが、全社展開への近道です。

FAQ:よくある質問

Q1. 月次連結決算の導入で、現場の負担は増えませんか?

A1. 最初は集計や資料作成が増える印象ですが、フローが標準化されると四半期・年次決算時の“突貫作業”が激減し、最終的に現場の負担は軽減します。

Q2. どのくらいの規模・業種の会社で月次化が必要ですか?

A2. 上場企業やグループ会社が5社以上ある場合は導入メリット大。ただし、中堅企業でもDX推進やグループ経営強化の観点から導入事例が増えています。

Q3. 連結会計システム導入は必須ですか?

A3. スモールスタートであればExcelや既存システムでも対応可能ですが、将来的な業務効率化・精度向上を考えると、専用ツールの導入が推奨されます。

用語解説

用語 解説
連結決算 親会社と子会社・関連会社を1つのグループとして、財務諸表を作成する会計手法。
月次化 年次や四半期単位ではなく、毎月実施・報告すること。
連結会計システム グループ各社のデータを集約・自動集計し、連結決算を効率化するソフトウェア。
ガバナンス 企業統治。グループ全体の統制・監督の仕組み。

まとめ

連結決算の月次化は、グループ経営の精度向上やAI活用など、今後の企業価値を高めるための重要な基盤となります。
「現場の負担増」や「システム投資が重い」というイメージも、スモールスタートであれば無理なく実現が可能です。

まずは“試しに1〜2社”から、小さな一歩を踏み出してみませんか? 経営層のコミットメントと現場巻き込み、そして業務プロセスの標準化が、成功のカギとなります。

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