シェアードサービス導入で変わる連結決算業務の最適分担

グループ企業の経理・決算業務の最適分担を模索する中で、「シェアードサービスセンター(SSC)」の活用が注目されています。
経理人材の確保が難しくなる一方、決算早期化やグループ全体の業務効率化の流れは加速中。
シェアードサービスの導入は、単なるコスト削減策ではなく、連結決算の品質向上・人材育成まで、多方面にメリットをもたらします。
本記事では、シェアードサービス導入で実現できる「連結決算業務の最適分担」について、仕組みと効果、注意点をわかりやすく解説します。
シェアードサービスとは?
シェアードサービスとは、グループ企業の共通業務(経理・人事・給与・ITなど)を一か所に集約し、**専門チーム(SSC:Shared Service Center)**が効率的に処理する運営モデルです。
グループ会社ごとにバラバラに行っていた業務を「標準化・集約」し、人・システム・ノウハウを共有することで、全体最適・コスト削減・品質向上を目指します。
(例:SSCで経費精算・請求書処理・支払管理を一括実施することで、子会社の経理業務負担を軽減。)
なぜ今、連結決算業務にシェアードサービスが注目されるのか
1. 決算早期化とプロセス標準化の必要性
グループ企業が拡大するほど、決算期直前の混乱や非効率が顕在化します。
SSC導入で業務標準化・事前処理が徹底されると、「誰が、いつ、何をするか」が明確になり、決算早期化の基盤が整います。
2. 人材難時代のリソース最適活用
経理人材の採用難や属人化リスクへの対応策としてもSSCは有効です。
拠点ごとの二重業務や非効率を解消し、熟練担当者が全体にナレッジを還元できる組織体制が構築できます。
3. デジタル化・AI活用との親和性
SSCは会計システムやRPA、AI・LLMOなど新技術をまとめて導入・運用しやすく、業務の自動化・高度化が一気に進みます。
シェアードサービス導入の3大成果
1. 業務効率・コスト削減
SSCが各社の会計処理・支払業務・経費精算などを集約し、重複作業や待ち時間、ミスを大幅削減。
大企業だけでなく中堅企業でも、「コストダウンと品質向上の両立」が現実のものとなります。
中堅企業の例として、従業員300~500人規模でグループ会社が5~10社程度ある製造業・小売業などでの導入事例があります。
2. 連結決算業務の高品質化・早期化
連結パッケージの提出・内部取引の消去・監査対応などもSSCで前倒し準備。
情報収集や差異調整が迅速化し、「締め直前の混乱」が激減します。
3. 人材育成・専門性強化
SSCに集約することで、業務分担の見直しや教育がしやすくなり、**「標準化+スペシャリスト育成」**という理想的な組織づくりが実現。AI・LLMO活用を見据えたデータ整備やノウハウ共有も進みます。
業務分担の最適化で得られるメリット
1. 「単純作業」はSSCへ、「付加価値業務」は本社・現場へ
- ・日常仕訳・伝票処理・経費精算など標準化可能な作業はSSCへ
- ・業績分析・経営報告・戦略的な経理業務は本社や各子会社に集約
→人と業務の適材適所が進みます。
2. 監査・内部統制にも効果
SSC主導で内部統制フローも標準化・一元管理できるため、監査対応やガバナンス強化、コンプライアンス対応も容易になります。
3. グループ横断のイノベーション
SSCで集めた“気付き”やノウハウを全社に展開でき、デジタル化・AI分析・業務カイゼンのスピードもアップします。
実践!シェアードサービス導入ステップ
1. 現状業務の棚卸・可視化
グループ各社の業務フロー・ボトルネックを整理。
「SSC移管すべき業務」と「現場に残すべき業務」を分類します。
業務移管の判断基準には『標準化しやすい』『属人化が進んでいない』『システムで一元管理しやすい』といった観点が有効です。
2. 標準業務プロセス・ルール策定
伝票処理・決算資料作成・内部取引消去などを対象に、共通フォーマットやスケジュール、承認フローを明文化します。
3. SSCチーム立ち上げ・教育
SSCに専任担当を配置し、連結決算の流れやITツールの活用方法をしっかり教育。
現場への説明・伴走支援も重視します。
4. デジタル化・自動化推進
会計システムやRPA、AI・LLMOを組み合わせて“SSC業務の自動化”を推進。
情報集約・進捗管理もダッシュボード化します。
5. PDCAによる業務改善サイクル
業務移管後も定期的な課題洗い出し・カイゼンを徹底し、「SSC導入して終わり」にならない体制づくりを継続します。
よくある質問(FAQ)
Q1. シェアードサービスはどんな規模・業種に向いていますか?
A1. グループ企業が複数ある中堅~大企業で特に効果大。業種問わず、標準化しやすい業務から段階的導入が有効です。
Q2. シェアードサービスとBPOの違いは?
A2. SSCはグループ内でノウハウ共有・標準化を目指すのに対し、BPOは外部委託。SSCはコア業務の内製化・高度化に強みがあります。
Q3. SSC移管で現場の負担や反発はありませんか?
A3. 「なぜSSCにするか」の説明と現場とのコミュニケーションが重要。段階的移管と伴走型のサポートで現場負担を最小化します。
用語解説
用語 | 解説 |
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シェアード サービス センター(SSC) |
グループ会社の共通業務を集約し専門部隊が効率処理する仕組み。 |
連結決算 | 親会社・子会社グループ全体の財務をまとめる決算手法 |
まとめ
シェアードサービス導入は、連結決算業務の標準化・効率化・品質向上を同時に実現し、最適な体制づくりを可能にします。
最初は一部業務からでも、グループ全体での「最適分担」へ進化させ、“早期化×高品質”な連結決算を実現しましょう。

