決算早期化のためにまず手をつけるべき3つのプロセス

監修者:公認会計士 飯塚 幸子

「毎年の決算作業が遅れてしまい、経営判断や次年度の準備に追われていませんか?」

多くの会社が抱える“決算の遅れ”は、単なる事務作業の問題にとどまらず、経営のスピードや信頼性にも大きな影響を与えます。

しかし、実はちょっとした工夫や仕組みの見直しだけで、決算業務を大幅にスピードアップし、効率的に進めることが可能です。
本記事では、「決算早期化」とは何か、そのメリットや実現を阻む課題、そしてまず手をつけるべき3つのプロセスについて、わかりやすく解説します。

決算早期化とは

「決算早期化」とは、企業が年度ごとの決算業務を、従来よりも短期間で効率的に完了させる取り組みを指します。
これにより、経営状況を迅速に把握し、次の戦略立案や資金調達、株主への報告など、経営判断をスピーディーに進めることが可能となります。

決算早期化は英語で「fast closing」や「quick closing」と表現され、グローバル企業では当たり前のように取り組まれています。日本でも、近年は「決算早期化の実務マニュアル」や「決算早期化 コンサル」といったワードが注目され、特に上場企業を中心にその重要性が高まっています。

法人決算の流れ

法人の決算業務は、通常、以下のような流れで進行します。

  1. ・会計帳簿の整理・残高確認
  2. ・経費・売上など各種資料の集計・仕訳
  3. ・試算表・決算書の作成
  4. ・税務申告書の作成・提出
  5. ・株主・経営陣への報告・承認

 

この一連の作業は多くの部署や担当者が関与するため、ひとつでも遅れが出ると全体のスケジュールに影響が出やすいのが特徴です。

決算早期化のメリット

決算早期化に取り組むことで、企業にはさまざまなメリットがあります。ここでは主要なポイントを解説します。

現状を把握し、対策を講じることができる

決算情報が早く手に入ることで、経営者や会計担当は「今、会社がどのような状況にあるのか」を迅速に把握できます。

その結果、売上不振やコスト増加といった課題への早期対策が可能となり、リスク回避や利益拡大の戦略立案にもつながります。

決算業務を見直すポイントになる

決算早期化を目指す過程で、これまでの業務フローやルールを見直す機会が生まれます。

例えば、不要な確認作業や重複した手続きの排除、書類の電子化などが進み、業務全体の効率化・標準化が実現できます。

働き方改革にもつながるコスト最適化

決算作業が長期化すると、残業や臨時スタッフの雇用が発生しがちですが、早期化を図ること無駄な人件費を抑えることができます。

また、他業務へのシフトもスムーズになり、従業員の働き方改革にも貢献します。

外部からの信用・評価の向上につながる

決算を早期に開示できる企業は、経営の透明性が高いと見なされ、
金融機関や株主、取引先など外部ステークホルダーからの信頼が向上します

特に上場企業の場合、決算早期化はIR(投資家向け情報開示)活動の強化にも直結します。

決算早期化のボトルネックは?

一方で、決算早期化の実現にはいくつかの障壁(ボトルネック)があります。主な課題としては、以下のようなものが挙げられます。

    • ・部門間の連携不足

各部署から必要書類が期日通りに集まらない、情報伝達の遅延などがよく見られます。

    • ・手作業による非効率

紙の伝票や手入力が多い場合、ミスや遅延が生じやすくなります。

    • ・会計システムの未整備

古いシステムやエクセルベースの処理では、情報の一元管理や自動化が進まず、早期化の足かせとなります。

    • ・担当者の経験不足や業務量の偏り

新人や少人数での運用では、業務負担が集中し、作業が遅れる原因になります。

まず手をつけるべき3つのプロセス

では、決算早期化を目指す企業は、まずどこから手をつけるべきでしょうか。ここでは特に効果の高い3つのプロセスを紹介します。

決算業務の見直しをおこなう

まず、現状の業務フローやチェックリストを洗い出し、「どの作業が遅れの原因になっているか」を明確にしましょう。

例えば、不要な承認フローや二重チェック、書類の手渡しなど、効率化できるポイントが見つかります。

外部の決算早期化コンサルや「決算早期化の実務マニュアル」など専門家の意見を取り入れるのもおすすめです。

勘定科目に関わる書類の提出期限を早める

決算書作成の遅延は、各部門からの書類提出遅れが主な原因です。

そこで、例えば「経費精算書は毎月10日まで」「在庫棚卸リストは期末翌日中に提出」など、明確な提出期限を設定し、社内で徹底します。

事例としては、書類提出をシステム化することで大幅なリードタイム短縮を実現した企業も多く存在します。

会計システムを導入する

最新の会計システムやERP(統合業務システム)を導入することで、データ入力や集計、帳票作成などが自動化・効率化されます。

SAPなどのグローバルシステムを活用した決算早期化の成功事例も数多く報告されています。小規模企業でもクラウド型会計システムの導入が効果的です。

まとめ

決算早期化は、単なる業務効率化ではなく、経営のスピードアップや企業価値向上につながる重要なテーマです。

まずは現状業務の洗い出しと見直し、社内ルールの徹底、そしてシステム導入から取り組んでみましょう。

実践にあたっては、専門書籍やセミナー、コンサルティング会社のサポートを活用するのもおすすめです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 決算早期化を実現した企業の具体的な事例は?

A1. 製薬会社の武田薬品工業や、大手コンサル会社のPwCなどは、会計システムの刷新とプロセスの標準化により、決算早期化を実現しています。
参考:

  • ・PwC:決算早期化に関する情報
  • ・武田薬品の決算早期化事例(日経クロステック)

Q2. 決算早期化における会計システムの選び方は?

A2. 規模や業種に応じて最適なシステムを選びましょう。クラウド型・ERP型・カスタム型など、複数の選択肢があり、導入サポート体制も重視しましょう。

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