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在外子会社に対する投資から生じたのれんは、支配獲得時において現地通貨で把握します。その後、のれんの未償却残高については決算時の為替相場によって換算し、のれんの当期償却額については他の費用項目と同様に期中平均相場によって換算します(外貨指針40項)。

また、負ののれんについては発生時の損益として処理するため発生時の為替相場で換算します。

在外子会社ののれん

(前提条件)

  • 親会社は、在外子会社の株式の80%(48ドル)を4,800で取得し、連結子会社とした。
  • 支配獲得時の在外子会社の資本勘定は、資本金20ドル、利益剰余金20ドルであった
  • 支配獲得時の在外子会社の土地(簿価30ドル)の時価は40ドルであった
(子会社の資産・負債の時価評価)
土地の評価替えの仕訳
(借方) 土地 10ドル (貸方) 評価差額 10ドル

子会社の資本勘定の換算

この例では、親会社の取得価額と子会社の純資産の親会社持分との差額がのれんとして計上されます。

子会社純資産 外貨 換算レート 円貨
資本金 20ドル *1@100 2,000
利益剰余金 20ドル *1@100 2,000
評価差額 10ドル *1@100 1,000
のれん *28ドル @100 800
  • 親会社の株式取得時レート@100( = 4,800 ÷ 48ドル )を用いて換算する。
  • 48ドル(取得原価) – ( 20ドル + 20ドル + 10ドル ) × 80% = 8ドル
(連結消去・修正仕訳)
投資と資本の消去(支配獲得時の仕訳)
(借方) 資本金 2,000 (貸方) 投資勘定 4,800
  利益剰余金 2,000   非支配株主持分 1,000
  評価差額 1,000      
  のれん 800      
  • ( 2,000 + 2,000 + 1,000 ) × 20% = 1,000
在外子会社ののれん(翌期の処理)
(前提条件) 上記の続き

  • 翌期の在外子会社の個別財務諸表は以下のとおりであった。

翌期の在外子会社の個別財務諸表

  • 利益剰余金の増加額は当期純利益10ドル
  • 翌期の決算時レートは@120、期中平均レートは@110であった。
  • のれんは発生年度の翌年から20年で定額法により償却する。
(子会社の資産・負債の時価評価)
土地の評価替えの仕訳
(借方) 土地 10ドル (貸方) 評価差額 10ドル

(子会社の財務諸表の換算)

子会社の財務諸表の換算

  • ( 100 + 10 ) × @120 ( 決算時レート ) = 13,200
  • 50 × @120 ( 決算時レート ) = 6,000
  • 20 × @100 ( 取得時レート ) = 2,000
  • 20 × @100 ( 取得時レート ) + 10 × @110 ( 期中平均レート ) = 3,100
  • 10 × @100 ( 取得時レート ) = 1,000
  • 貸借差額
(連結消去・修正仕訳)
開始仕訳(投資と資本の消去)
(借方) 資本金 2,000 (貸方) 投資勘定 4,800
  利益剰余金 2,000   非支配株主持分 1,000
  評価差額 1,000      
  のれん 800      
  • ( 2,000 + 2,000 + 1,000 ) × 20% = 1,000
当期純利益の按分
(借方) 非支配株主損益 220 (貸方) 非支配株主持分 220
  • 当期純利益 1,100 × 20% = 220
為替換算調整勘定の按分
(借方) 為替換算調整勘定 220 (貸方) 非支配株主持分 220
  • 為替換算調整勘定 1,100 × 20% = 220
のれんの償却

のれんの償却額は期中平均レートを用いて計算します。また、期末残高の換算には決算時レートを用います。この結果生じた貸借差額は為替換算調整勘定で処理します。

(借方) のれん償却費 44 (貸方) のれん 44
  • ( 8ドル ÷ 20年 ) × @110 ( 期中平均レート ) = 44
(借方) のれん 156 (貸方) 為替換算調整勘定 156
  • ( 8ドル × 19年 ÷ 20年 ) × @120 ( 決算時レート ) – ( 800 – 44 ) = 156

以上の仕訳を行った結果の連結貸借対照表は以下のようになります。

連結貸借対照表

連結貸借対照表

  • ( 8ドル × 19年 ÷ 20年 ) × @120 ( 決算時レート) = 912
  • 1,100 × 80% + 156 = 1,036
  • 子会社資本勘定 ( 20ドル + 30ドル + 10ドル ) × 20% × @120 ( 決算時レート ) = 1,440

結果として、非支配株主持分は子会社資本勘定の非支配株主持分を決算時レートで換算した金額となります。