一部売却の場合(持分比率が減少した場合)
追加取得と同様に、一部売却の場合も非支配株主との取引となるため、連結キャッシュ・フロー計算書においては、非支配株主から受け取った金額を財務活動によるキャッシュ・フローの区分に「連結範囲の変更を伴わない子会社株式の売却による収入」として表示します。
一部売却の場合(持分比率が減少した場合)

<設例>一部売却の場合(持分比率が減少した場合)
当社は3,600(90%)出資して子会社を設立し連結子会社としている。
当期末に子会社株式10%(簿価400)を600で売却し、期末の持分比率は80%となった。【資料】を参考に当期の連結キャッシュ・フロー計算書(間接法)を作成しなさい。
【資料1】親会社の前期及び当期の個別貸借対照表とその増減

【資料2】親会社の当期の損益計算書

【資料3】子会社の前期及び当期の個別貸借対照表とその増減
【資料4】前期及び当期の連結貸借対照表とその増減

【資料5】当期の連結損益計算書

<設例>解答・解説
①原則法による連結キャッシュ・フロー計算書の作成
原則法による連結キャッシュ・フロー精算表

子会社株式の一部売却を行った場合、親会社の個別キャッシュ・フロー計算書では売却による収入額を、「子会社株式の売却による収入」(投資活動によるキャッシュ・フロー)として計上します。
一方、連結上では、子会社株式の一部売却(支配継続)は非支配株主との取引となるため、連結キャッシュ・フロー計算書上は、財務活動によるキャッシュ・フローの区分に「連結範囲の変更を伴わない子会社株式の売却による収入」として表示します。
また、連結仕訳によって、親会社の個別財務諸表上で表示されていた「子会社株式売却益」は取り消すため、連結キャッシュ・フロー計算書上も「税金等調整前当期純利益」と「子会社株式売却益」の修正が必要となります。
②簡便法による連結キャッシュ・フロー計算書の作成
簡便法による連結キャッシュ・フロー精算表

子会社株式を一部売却した場合、親会社の持分比率が減少し、非支配株主の持分比率が増加します。この減少した持分と売却価額の差額は「資本剰余金」として処理します。この設例において、連結消去・修正仕訳は以下のようになります。
(連結消去・修正仕訳)一部売却(支配継続)に関する仕訳
子会社株式 | ※1 400 |
---|---|
子会社株式売却益 | ※2 200 |
資本剰余金 | ※3 100 |
非支配株主持分 | ※4 700 |
※1 売却簿価
※2 親会社単体の子会社株式売却益
※3 貸借差額
※4 貸借差額
連結消去・修正仕訳を見てわかるとおり、一部売却(支配継続)による非支配株主の増加700と資本剰余金の減少100の差額が一部売却時の売却価額(売却簿価+売却益)となります。よって、簡便法による連結キャッシュ・フロー計算書を作成する場合は、「非支配株主持分」の増加700と「資本剰余金」の減少△100の差額600を「連結範囲の変更を伴わない子会社株式の売却による収入」600に反映させます。