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子会社に係るその他の包括利益累計額がある場合、増加する非支配株主持分には含まれますが、売却持分には含まれません(資本連結指針42項)。

数値例を用いて見てみましょう。

一部売却時の仕訳(その他の包括利益累計額がある場合)

(前提条件)

  • 親会社はX0年3月31日に、S社株式の80%(80株)を1,680で取得し、連結子会社とした。
  • 支配獲得時のS社の純資産は資本金1,000、利益剰余金600、その他有価証券評価差額金400であった。
  • 支配獲得時のS社の資産・負債の簿価と時価は同額であった。
  • 親会社はX1年3月31日に、S社株式の10%(10株)を240で売却し、子会社株式売却益30を計上した。
  • 一部売却時のS社の純資産は資本金1,000、利益剰余金700(当期純利益100)、その他有価証券評価差額金500であった。
  • のれんは発生年度の翌年から10年で定額法により償却する。
(連結消去・修正仕訳)
開始仕訳(投資と資本の消去)
(借方) 資本金 1,000 (貸方) 投資勘定 1,680
  利益剰余金 600   非支配株主持分 *1400
  その他の有価証券評価差額金 400      
  のれん *280      
  • ( 1,000 + 600 + 400 ) × 20% = 400
  • 1,680 – ( 1,000 + 600 + 400 ) × 80% = 80

一部売却が行われたのは当期末なので、当期純利益及びその他有価証券評価差額金の増加額は、一部売却前の持分比率を用いて非支配株主持分に按分します。また、当期分ののれんの償却仕訳を行います。

当期純利益の按分
(借方) 非支配株主損益 20 (貸方) 非支配株主持分 20
  • 100 × 20% = 20
その他有価証券評価差額金の按分
(借方) その他有価証券評価差額金 20 (貸方) 非支配株主持分 20
  • ( 500 – 400 ) × 20% = 20
のれんの償却
(借方) のれん償却費 8 (貸方) のれん 8
  • 80 ÷ 10年 = 8

その後、一部売却に関する仕訳を行います。子会社株式の一部を売却しても、親会社と子会社の支配関係が継続している場合には、売却した株式に対応する持分を親会社の持分から減額し、非支配株主持分を増額させるとともに、売却持分と売却価額との差額を資本剰余金として処理します(資本連結指針42項)。

なお、子会社に係るその他の包括利益累計額がある場合には、売却した株式に対応する持分には含まれますが、売却持分には含まれません。

その結果、具体的な仕訳は以下のようになります。

一部売却に関する仕訳
(借方) 投資勘定 210 (貸方) 非支配株主持分 *1220
  子会社株式売却益 *230   資本剰余金 *430
  その他有価証券評価差額金 *310      
  • 売却した株式に対応する持分 2,200 × 10% = 220
  • 個別財務諸表上で計上している子会社株式売却益
  • 子会社の支配獲得時に計上したその他有価証券評価差額金の売却持分相当額 ( 500 – 400 ) × 10% = 10
  • 売却価額と売却持分との差額
    240 – ( 2,200 × 10% – 10(その他有価証券評価差額金) ) = 30

以上を図で示すと以下のようになります。

一部売却のイメージ(その他の包括利益累計額がある場合)
一部売却のイメージ(その他の包括利益累計額がある場合) 売却前 一部売却のイメージ(その他の包括利益累計額がある場合) 売却後