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支配獲得時にのれんが計上されていた場合、一部売却時においてのれんの未償却額がある場合でも、のれんの取り崩しの処理は行いません(連基66-2項、資本連結指針44項)。

簡単な設例でみてみましょう。

一部売却時の仕訳(のれん未償却残高がある場合)

(前提条件)

  • 親会社はX0年3月31日に、S社株式の80%(80株)を1,680で取得し、連結子会社とした。
  • 支配獲得時のS社の純資産は資本金1,000、利益剰余金1,000であった。
  • 支配獲得時のS社の資産・負債の簿価と時価は同額であった。
  • 親会社はX1年3月31日に、S社株式の10%(10株)を240で売却し、子会社株式売却益30を計上した。
  • 一部売却時のS社の純資産は資本金1,000、利益剰余金1,200(当期純利益200)であった。
  • のれんは発生年度の翌年から10年で定額法により償却する。
(連結消去・修正仕訳)
開始仕訳(投資と資本の消去)
(借方) 資本金 1,000 (貸方) 投資勘定 1,680
  利益剰余金 1,000   非支配株主持分 400
  のれん *80      
  • 1,680 – ( 1,000 + 1,000 ) × 80% = 80

一部売却が行われたのは当期末なので、当期純利益は一部売却前の持分比率を用いて非支配株主持分に按分します。また、当期分ののれんの償却仕訳を行います。

当期純利益の按分
(借方) 非支配株主損益 40 (貸方) 非支配株主持分 40
  • 200 × 20% = 40
のれんの償却
(借方) のれん償却費 8 (貸方) のれん 8
  • 80 ÷ 10年 = 8

その後、一部売却に関する仕訳を行います。その際には、以下の流れで仕訳を考えます。

①支配株主(親会社)持分から非支配株主持分への移動
(借方) 親会社持分 220 (貸方) 非支配株主持分 220
  • 一部売却時の子会社純資産 × 一部売却比率 = 2,200 × 10% = 220
②減少した親会社持分と売却投資額の相殺消去の戻し
(借方) 投資勘定 210 (貸方) 親会社持分 220
  子会社株式売却益 *130   資本剰余金 *220
  • 個別上で計上している子会社株式売却益を消去する。
  • 売却価額と売却持分との差額は「資本剰余金」として計上する。

①と②の仕訳を合わせると、一部売却に関する仕訳は以下のようになります。

一部売却に関する仕訳
(借方) 投資勘定 210 (貸方) 非支配株主持分 220
  子会社株式売却益 30   資本剰余金 20

これを図で示すと、以下のようになります。

一部売却のイメージ(のれん未償却額がある場合)
一部売却のイメージ(のれん未償却額がある場合) 売却前
一部売却のイメージ(のれん未償却額がある場合) 売却後