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ここでは、連結子会社の株式を一部売却し、持分比率が減少した場合の処理を取り上げます。子会社株式を売却した場合には、持分比率が著しく減少し、連結子会社ではなくなってしまうケースもありますが、取り上げるのは持分比率が減少しても連結の範囲に留まっているケースです。

子会社株式を一部売却した場合には、子会社純資産に対する親会社持分が減少し、非支配株主持分が増加します。個別財務諸表上においては、子会社株式の売却簿価と売却価額との差額が子会社株式売却損益として損益計算書に計上されています。しかしながら、連結財務諸表上は、支配が継続しているため売却損益は計上せず、資本剰余金の増減として処理します(資本連結指針42項)。

なお、追加取得の場合と同様に、資本剰余金がマイナス値となる場合には、連結会計年度末において資本剰余金はゼロとし、残額は利益剰余金から控除します(連基30-2項)。

一部売却時の仕訳(支配が継続している場合)

(前提条件)

  • 親会社はX0年3月31日に、80%(80株)を出資し子会社S社を設立した(親会社のS社株式1,600)。
  • 支配獲得時のS社の純資産は資本金2,000であった。
  • 親会社はX1年3月31日に、S社株式の10%(10株)を210で売却し、子会社株式売却益10を計上した。
  • 一部売却時のS社の純資産は資本金2,000、利益剰余金200(当期純利益200)であった
(連結消去・修正仕訳)
開始仕訳(投資と資本の消去)
(借方) 資本金 2,000 (貸方) 投資勘定 1,600
        非支配株主持分 400

一部売却が行われたのは当期末なので、当期純利益は一部売却前の持分比率を用いて非支配株主持分に按分します。

当期純利益の按分
(借方) 非支配株主損益 40 (貸方) 非支配株主持分 40
  • 200 × 20% = 40

その後、一部売却に関する仕訳を行います。一部売却があった場合、以下の流れで仕訳を考えます。

①支配株主(親会社)持分から非支配株主持分への移動
(借方) 親会社持分 220 (貸方) 非支配株主持分 220
  • 一部売却時の子会社純資産 × 一部売却比率 = 2,200 × 10% = 220
②減少した親会社持分と売却投資額の相殺消去の戻し
(借方) 投資勘定 200 (貸方) 親会社持分 220
  子会社株式売却益 *110      
  資本剰余金 *210      
  • 個別財務諸表上で計上している子会社株式売却益を消去する。
  • 売却価額と売却持分との差額は「資本剰余金」として計上する。

①と②の仕訳を合わせると、一部売却に関する仕訳は以下のようになります。

一部売却に関する仕訳
(借方) 投資勘定 200 (貸方) 非支配株主持分 220
  子会社株式売却益 10      
  資本剰余金 10      

親会社の投資勘定と子会社の純資産勘定の関係を図で示すと下の図のようになります。

一部売却のイメージ
一部売却のイメージ(売却前)
一部売却のイメージ(売却後)