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過去に支配を獲得し連結の範囲に含めている連結子会社の株式を追加取得し、持分比率が増加した場合の処理について見ていきます。

子会社株式を追加取得した場合には、子会社純資産に対する親会社の持分が増加し、その分、非支配株主の持分が減少します。今まで非支配株主持分として計上されていた部分のうち、追加取得に相当する部分が親会社の持分になります。

追加取得によって増加した子会社純資産に対する親会社持分は、追加投資額と相殺消去し、差額は資本剰余金として処理します(連基28項)。

以前は追加取得に生じる差額をのれん(負ののれん)として処理していましたが、平成25年の改正により、子会社株式の追加取得を支配株主と非支配株主との間における資本取引と捉えることになったことに伴い、差額はのれん(負ののれん)ではなく資本剰余金として処理することとなりました。

それでは、数値例を用いて見てみましょう。

追加取得時の仕訳

(前提条件)

  • 親会社はX0年3月31日に、s社株式の80%(80株)を1,600で取得し、連結子会社とした。
  • 支配獲得時のS社の純資産は資本金1,000、利益剰余金600であった。
  • 支配獲得時のS社の土地(簿価600)の時価は1,000であった。
  • 親会社は×1年3月31日に、s社株式10%(10株)を240で追加取得した。
  • 追加取得時のS社の純資産は資本金1,000、利益剰余金800(当期純利益200)であった
(連結消去・修正仕訳)
開始仕訳(子会社の資産・負債の時価評価)
(借方) 土地 400 (貸方) 評価差額 400
  • 1,000 – 600 = 400
開始仕訳(投資と資本の消去
(借方) 資本金 1,000 (貸方) 投資勘定 1,600
  利益剰余金 600   非支配株主持分 400
  評価差額 400      

追加取得が行われたのは当期末なので、当期純利益は追加取得前の持分比率を用いて非支配株主持分に按分します。

当期純利益の按分
(借方) 非支配株主損益 40 (貸方) 非支配株主持分 40
  • 200 × 20% = 40

その後、追加取得に関する仕訳を行います。

支配獲得時に評価差額が計上されていた場合、親会社持分にも非支配株主持分にも支配獲得時の評価差額は含まれています。そのため、追加取得よって増加する親会社持分と減少する非支配株主持分の金額は支配獲得時の評価差額も含めて計算します。

①非支配株主持分から支配株主(親会社)持分への移動
(借方) 非支配株主持分 220 (貸方) 親会社持分 220
  • 追加取得時の子会社純資産額(評価差額を含む) × 追加取得比率 = 2,200 × 10% = 220
②増加した親会社持分と追加投資額の相殺消去
(借方) 親会社持分 220 (貸方) 投資勘定 240
  資本剰余金 20      

①の仕訳で増加した親会社持分と追加投資額とを、②の仕訳で相殺消去し、生じた差額は資本剰余金で処理します。

①と②の仕訳を合わせると、追加取得に関する仕訳は以下のようになります。

追加取得に関する仕訳
(借方) 非支配株主持分 220 (貸方) 投資勘定 240
  資本剰余金 20      

この一連の流れを図で示すと、以下のようになります。

追加取得した場合のイメージ
追加取得した場合のイメージ(取得前)
追加取得した場合のイメージ(取得後)