子会社から関連会社になった場合の考え方
株式を一部売却したことにより、支配を喪失し、連結子会社が関連会社になったケースを見てみましょう。
株式の一部を売却しても支配が継続している場合には、連結財務諸表上子会社株式売却損益は計上しません。売却価額と売却持分との差額は資本剰余金として処理します。
その一方で、支配を喪失した場合には、個別財務諸表上で計上している子会社株式売却損益を連結財務諸表上のあるべき売却損益に修正するための仕訳が必要になります(資本連結指針45項)。
また、今まで連結していた会社が関連会社になった場合には、連結会社が保有する当該株式の帳簿価額を持分法評価額と同額にするための修正が必要となります。
それでは簡単な設例で見てみましょう。
一部売却により子会社から関連会社になった場合の仕訳
(前提条件)
- 親会社はX0年3月31日に子会社S社を設立した。出資割合は80%(80株)で出資額は1,600であった。
- 支配獲得時の子会社純資産は資本金2,000であった。
- 親会社はX1年3月31日に、S社株式の50%(50株)を1,020で売却し、持分法適用会社とした(子会社株式売却益20)。
- 一部売却時のS社の純資産は資本金2,000、利益剰余金200(当期純利益200)であった。
(連結消去・修正仕訳)
開始仕訳(投資と資本の消去)
(借方) | 資本金 | 2,000 | (貸方) | 投資勘定 | 1,600 |
非支配株主持分 | 400 |
一部売却が行われたのは当期末なので、当期純利益は一部売却前の持分比率を用いて非支配株主持分に按分します。
当期純利益の按分
(借方) | 非支配株主損益 | 40 | (貸方) | 非支配株主持分 | 40 |
- 200 × 20% = 40
その後、一部売却に関する仕訳を行います。まずは、一部売却時の仕訳(支配が継続している場合)や一部売却時の仕訳(のれん未償却額がある場合)と同様に、以下の流れで仕訳を考えます。
①支配株主(親会社)持分から非支配株主持分への移動
(借方) | 親会社持分 | 1,100 | (貸方) | 非支配株主持分 | 1,100 |
- 一部売却時の子会社純資産 × 一部売却比率 = 2,200 × 50% = 1,100
②減少した親会社持分と売却投資額の相殺消去の戻し
(借方) | 投資勘定 | 1,000 | (貸方) | 親会社持分 | 1,100 |
子会社株式売却益 | *120 | ||||
子会社株式売却損 | *280 |
- 個別財務諸表上で計上している子会社株式売却益を消去する。
- 支配を喪失したため、売却価額と売却持分との差額は連結財務諸表上の「子会社株式売却損益」として計上する
①と②の仕訳を合わせると、一部売却に関する仕訳は以下のようになります。
一部売却に関する仕訳
(借方) | 投資勘定 | 1,000 | (貸方) | 非支配株主持分 | 1,100 |
子会社株式売却益 | 20 | ||||
子会社株式売却損 | 80 |
その後、連結子会社ではなく持分法適用会社となったため、投資と資本の消去に関する連結消去・修正仕訳をすべて取り消す仕訳を行います。
子会社から持分法適用会社への移行
(借方) | 非支配株主持分 | *11,540 | (貸方) | 資本金 | 2,000 |
投資勘定 | *2600 | 利益剰余金 | 200 | ||
投資勘定 | *360 |
- 開始仕訳 400 + 当期純利益の按分 40 + 一部売却1,100 = 1,540
(当期末子会社純資産 2,200 × 70% = 1,540) - 投資勘定の残存価額 開始仕訳で全額消去しているため、持分法移行に際して消去されている投資勘定を連結上は戻す仕訳を行います。
- 持分法移行後の投資勘定が持分法適用による評価額となるように、取得後剰余金のうち売却後持分に相当する部分を投資勘定に加算する。
( 200 × 30% = 60 )
以上を図で示すと以下のようになります。
一部売却して持分法適用会社になった場合のイメージ