資産・負債の時価評価
監修者:公認会計士 飯塚 幸子
連結子会社の場合と同様に、持分法適用会社においても、持分法の適用日において、資産及び負債を時価評価する必要があります(持基8項)。持分法適用会社の資産及び負債の時価による評価額と簿価との差額は、税効果考慮後の金額を評価差額として持分法適用会社の資本とします。ただし、評価差額に重要性が乏しい場合には、簿価を利用することができます(持分指針6項)。
このとき、非連結子会社の場合は、連結子会社の場合と同様に支配獲得日の時価で評価します(全面時価評価法)が、関連会社の場合は、株式の取得日ごとに当該日における時価によって、投資会社の持分に相当する部分のみを時価で評価します(部分時価評価法)。
部分時価評価法を用いる際には2つの方法があります。
1.原則法
持分法適用開始日までに株式を段階的に取得している場合、株式の取得日ごとに当該日の時価で関連会社の資産及び負債を時価評価します(持分指針6-2項)。
2.簡便法
株式の段階取得に係る計算の結果が原則法の場合と著しく相違しない場合には、持分法適用開始日における時価を基準として、関連会社の資産及び負債のうち投資会社の持分に相当する部分を一括して評価することができます(持分指針6-3項)。
なお、上記のケースのほか、過去の段階的な株式取得時の詳細なデータが入手できない場合にも簡便法での処理が認められています。この場合であっても、持分法適用日以前の日付でデータ取得が可能な場合には、当該日における時価を基準として資産及び負債の評価を行うことが望ましいとされています(同後段)。
持分法適用時の評価差額の計算
(前提条件)
- 株式の取得状況は以下のとおりであった。
- 持分法適用会社の純資産と土地の簿価および時価は以下のとおりであった。
X0年度末 | X1年度末 | X2年度末 | |
---|---|---|---|
純資産 | 2,000 | 2,400 | 2,600 |
土地(簿価) | 1,600 | 1,600 | 1,600 |
土地(時価) | 1,800 | 2,000 | 2,200 |
- 税効果は考慮しない。
原則法の場合
X0年度末 | X1年度末 | X2年度末 | |
---|---|---|---|
純資産 | 2,000 | 2,400 | 2,600 |
評価差額 | ※110 | ※2+20 計30 |
※3+60 計90 |
持分比率 | 5% | +5% 計10% |
+10% 計20% |
- ( 1,800 ( 時価 ) – 1,600 ( 簿価 ) ) × 5% = 10
- ( 2,000 ( 時価 ) – 1,600 ( 簿価 ) ) × 5% ( 追加取得 ) = 20
- ( 2,200 ( 時価 ) – 1,600 ( 簿価 ) ) × 10% ( 追加取得 ) = 60
簡便法① 原則法で処理した場合と著しく相違しない場合
X0年度末 | X1年度末 | X2年度末 | |
---|---|---|---|
純資産 | – | – | 2,600 |
評価差額 | – | – | ※120 |
持分比率 | – | – | +20% |
- ( 2,200 ( 時価 ) – 1,600 ( 簿価 ) ) × 20% = 120
簡便法② 詳細データ入手不能により、X1年度末を簡便法適用日とした場合
X0年度末 | X1年度末 | X2年度末 | |
---|---|---|---|
純資産 | – | 2,400 | 2,600 |
評価差額 | – | ※140 | ※260 計100 |
持分比率 | – | 10% | +10% 計20% |
- ( 2,000 ( 時価 ) – 1,600 ( 簿価 ) ) × 10% ( 簡便法適用日の持分比率 ) = 40
- ( 2,200 ( 時価 ) – 1,600 ( 簿価 ) ) × 10% ( 追加取得 ) = 60