子会社が自社の株式を非支配株主から取得した場合
連結子会社が自社の自己株式を非支配株主から取得または非支配株主へ処分を行った場合には、それぞれ親会社による子会社株式の追加取得または一部売却に準じて処理を行います(自己株式指針第17項)。
連結子会社が自己の株式を非支配株主から取得した場合、自己株式の取得の対価と非支配株主持分の減少額との差額を資本剰余金として処理します(自己株式指針18項)。
連結子会社が自社の株式を非支配株主から取得した場合の仕訳
(前提条件)
- 親会社はX0年3月31日に、S社の株式の64%(64株)を1,280で取得し、連結子会社とした。
- 支配獲得時のS社純資産は資本金1,600、利益剰余金400であった。
- 支配獲得時のS社の資産・負債の簿価と時価は同額であった。
- S社はX1年3月31日に自己株式20株を400で非支配株主から取得した。
- 自己株式取得直後のS社純資産は資本金1,600、利益剰余金600(当期純利益200)、自己株式△400であった。
(連結消去・修正仕訳)
開始仕訳(投資と資本の消去)
(借方) | 資本金 | 1,600 | (貸方) | 投資勘定 | 1,280 |
利益剰余金 | 400 | 非支配株主持分 | *720 |
- ( 1,600 + 400 ) × 36% = 720
自己株式の取得が行われたのは当期末なので、当期純利益は自己株式取得前の持分比率を用いて非支配株主持分に按分します。
当期純利益の按分
(借方) | 非支配株主損益 | 72 | (貸方) | 非支配株主持分 | 72 |
- 200 × 36% = 72
子会社が子会社自身の株式を取得した場合、まず、従来の親会社と非支配株主の持分比率に応じて株式の払い戻しを受けたとみなして、投資勘定と非支配株主持分の合計額を子会社が計上している自己株式と相殺消去します。
①従来の比率で払戻しを受けたとみなす
(借方) | 投資勘定 | *1256 | (貸方) | 自己株式 | 400 |
非支配株主持分 | *2144 |
- 400 × 64% (親会社持分比率) = 256
- 400 × 36% (非支配株主持分比率) = 144
その後、払い戻しを受けた現金で追加取得を行ったものとみなします。追加取得したとみなした金額と減少する非支配株主持分との差額は資本剰余金として処理します。
②払戻しを受けた現金で追加取得を行ったものとみなす
(借方) | 非支配株主持分 | *2288 | (貸方) | 投資勘定 | *1256 |
資本剰余金 | *332 |
- 1の仕訳金額
- ( 1,600 + 600 – 400 ) × ( 80% – 64% ) (持分比率増加分) = 288
- 貸借差額
持分の変動は以下のようになっています。自己株式の取得によって、非支配株主の持分が減少した部分は16%だということがわかります。
自己株式取得による持分の変動
自己株式取得前 | 自己株式 | 自己株式取得後 | |
---|---|---|---|
親会社持分 | 64株(64%) | – | 64株(80%) |
非支配株主持分 | 36株(36%) | △20株 | 16株(20%) |
合計 | 100株 | △20株 | 80株 |
①と②の仕訳を合わせると、連結子会社による非支配株主からの自己株式の取得に関する仕訳は以下のようになります。
連結子会社による非支配株主からの自己株式取得に関する仕訳
(借方) | 非支配株主持分 | 432 | (貸方) | 自己株式 | 400 |
資本剰余金 | 32 |
親会社の投資勘定と子会社の純資産勘定の関係を図で示すと下図のようになります。
連結子会社が自社の株式を非支配株主から取得した場合のイメージ