株式の売却等によって、持分法適用会社が子会社にも関連会社にも該当しなくなった場合には、当該会社の株式は個別貸借対照表上の帳簿価額を持って評価します(持分指針19項)。

なお、持分法適用除外日における取得後利益剰余金の投資会社持分額は、連結株主資本等変動計算書上、利益剰余金の区分に持分法適用会社の減少に伴う利益剰余金減少高(又は増加高)等の科目で表示します(持分指針33項)。

一部売却により持分法適用会社から外部会社となった場合の仕訳

(前提条件)

  • P社はX0年3月31日に、A社株式の30%を900で取得し、持分法適用会社とした。
  • 持分法適用日のA社資本勘定は資本金1,000、利益剰余金1,000であった。
  • 持分法適用日のA社の土地(簿価600)の時価は1,400であった。
  • のれんは発生年度の翌年から10年で定額法により償却する。
  • P社はX1年3月31日に親会社はA社株式の20%(簿価600)を700で売却した。
  • 売却日のA社資本勘定は資本金1,000、利益剰余金1,200(当期純利益200)であった。
(持分法適用に関する仕訳)
持分法適用時(X0年3月31日)の仕訳
仕訳なし        
  • ただし、のれん 60 ( = 900 – (( 1,000 + 1,000 ) × 30% + ( 1,400 – 600 ) × 30% )) は認識する。

一部売却が行われたのは当期末なので、当期純利益は一部売却前の持分比率を用いて認識します。また当期ののれん償却仕訳も行います。

当期純利益の認識
(借方) 投資勘定 60 (貸方) 持分法による投資損益 60
  • 当期純利益 200 × 30% = 60
のれんの償却
(借方) 持分法による投資損益 6 (貸方) 投資勘定 6
  • のれん 60 ÷ 10年 = 6

一部売却直前の投資勘定とA社純資産の関係は下の図のようになっています。

一部売却直前の投資勘定とA社純資産の関係
一部売却直前の投資勘定とA社純資産の関係

その後、一部売却に関する仕訳を行います。売却した株式に対応する持分の減少と投資の減少額との間に生じた差額は、持分法適用会社の株式の売却損益の修正として処理します。

一部売却の仕訳
(借方) 関連会社株式売却益 36 (貸方) 投資勘定 36
  • ( 60 – 6 ) × 20% ÷ 30% = 36

一部売却に関する処理を図解すると、以下のようになります。

個別上の簿価と連結上の簿価
個別上の簿価と連結上の簿価
持分法適用除外の仕訳

一部売却により、持分法適用会社から外部会社となった場合、残存する当該会社の株式を持分法による投資評価額(連結上の簿価)から個別財務諸表上の簿価に修正します。この仕訳を行うことにより、A社に対する投資勘定は個別財務諸表と連結財務諸表で同額になります。

(借方) 持分法適用会社の減少に伴う利益剰余金減少高 18 (貸方) 投資勘定 18
  • ( 当期純利益 60 – のれん償却 6 ) × 10% ÷ 30% = 18

結果として、連結上の簿価と個別上の簿価の差額は、取得後利益剰余金(この例では当期純利益)200の持分相当額(10%)から、のれんの償却額6の持分相当額(10%÷30%)を控除した金額であることがわかります。

個別上の簿価と連結上の簿価の差額
個別上の簿価と連結上の簿価の差額

なお、支配を喪失して子会社から関連会社になり、持分法を適用することとなった場合には、連結財務諸表上、関連会社株式の投資原価には支配喪失以前に費用処理した支配獲得時の付随費用は含めません。

このため、その後に一部売却して外部会社になった際、個別上の売却簿価に含まれている付随費用のうち売却した部分に対応する額は売却損益の修正として、引き継き保有する部分に対応する額については、持分法適用会社の減少に伴う利益剰余金減少高(または増加高)として処理します(資本連結指針46-2項)。

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